和楽一筋が対応している和楽器の楽譜について解説します。

琵琶(薩摩琵琶弾法譜)

琵琶は、古代に西アジアで誕生した弦楽器です。
日本には奈良時代に伝来し、雅楽で使われる楽琵琶、弾き語りで使われる薩摩琵琶、筑前琵琶などに発展していきました。

楽器や流派によって、四弦または五弦の琵琶が使われます。
ギターでいうフレットは「柱」(じ)と呼ばれ、これを指で押さえて緩めたり締め付けたりして、撥(バチ)で演奏することで様々な音を出すことができます。

琵琶法師

記譜法

琵琶は歴史が古い楽器であるため、様々な楽譜があります。

私が調べた限りでは、薩摩琵琶で主に使用され三角の記号や斜線で表現する弾法譜、筑前琵琶で使用され三角や丸の記号で表現する弾法譜、三味線や箏の楽譜に準拠した家庭式譜などがあるようです。
楽譜を統一する動きはなく、各団体が別々の記譜法を使い続けている状態です。

和楽一筋では、薩摩琵琶で使用されている弾法譜に対応しています。

この弾法譜は、横書きの四線譜の上に、指で押さえる場所(勘所)や奏法を表す記号・数字を書いていきます。
勘所は「段」と呼ばれ、一段~五段がそれぞれの柱に対応しています。

四線譜の4つの線は、上から順番に「四・五弦」「三弦」「二弦」「一弦」を表します。
楽器は五弦五柱ですが、楽譜上・調律上は四・五弦を区別しません。

音の長さを表す記号や、小節を表す記号はありません。

  • 開放弦と、段を押さえて出す音
    開放弦は丸、押さえて出す音は三角で表現します。
    押さえて出すときは、三角の上に段を表す数字を書きます。
    鶴田流薩摩琵琶弾法譜
  • 払いと、スクイ
    弦を手前から向こうに弾く「払い」は△、弦を撥先ですくい上げる「スクイ」は▽で表現します。
    鶴田流薩摩琵琶弾法譜
  • 記号の上の数字
    「1~5」⇒ 一段~五段を表します。
    「6~9」⇒ 五段の押シカンを表します。
    鶴田流薩摩琵琶弾法譜
  • 押シカン
    左手指で弦を強く押し込んで音程を上げる「押シカン」または「シメ」は、段によって表記が違います。
    一段~四段までの押シカンは、黒点を記号の下に書きます。
    一つシメ(一律上)は黒点1個、二つシメ(二律上)は黒点2個です。
    鶴田流薩摩琵琶弾法譜
    五段の押シカンは、以下のように表現します。
    一つシメ(「5」の一律上) ⇒ 5、黒点1個
    二つシメ(「5」の二律上) ⇒ 6
    三つシメ(「5」の三律上) ⇒ 7
    四つシメ(「5」の四律上) ⇒ 7、黒点1個
    五つシメ(「5」の五律上) ⇒ 8
    六つシメ(「5」の六律上) ⇒ 8、黒点1個
    七つシメ(「5」の七律上) ⇒ 9
    鶴田流薩摩琵琶弾法譜
  • 指使い
    一本指(人差し指)は白色に黒の枠線で書きます。
    二本指(中指と薬指)は黒色で塗りつぶします。
    鶴田流薩摩琵琶弾法譜

奏法

和楽一筋では、以下の奏法記号を記述できます。

  • 開放弦
    弦をどこも押さえずに弾く。
    払イとスクイの別がある。
  • 払イ撥
    弦を手前から向こうに払うように弾く、最も基本的な奏法。
  • スクイ
    懸ケ撥、掬ケ撥、掛ケ撥(かけばち)ともいう。
    払イ撥とは逆に、弦を撥先ですくい上げて奏する。「すくう」。
  • 押シカン
    左手指で弦を強く押し込んで音程を上げる。
    指1本のときと2~3本で押さえる方法があり、記譜法が異なる。
  • 打チ撥
    より強く弦を打つことによって、弦のみでなく、撥先が腹板に当たる音も出るようにする、
    払イ撥よりもアタックの強い奏法。
  • ハタキ撥
    撥の広い面で腹板をはたいた勢いで1弦、あるいは全弦を弾奏する。
    打チ撥よりもさらに強いアタックを必要とする。
  • 掻キ撥
    1弦より45弦に向かってアルペジオ風に奏する。
    比較的早く奏するのと、各音を明確に出す場合の二つの場合がある。
    「かく」。
  • 返シ撥
    逆撥(さかばち)。掻キ撥とは逆に、45弦より1弦に向かって撥を返してアルペジオ風に奏する。
    反対側の撥先を用いる。
    「かえす」。
  • 切リ撥
    キリ。撥先で弦を切るように擦り打つ。
    強い終息感がある。
    3弦で用いることが多い。
  • シゲ手
    払イ撥と掛ケ撥を連続して奏する、いわゆるトレモロ。
  • ユリ
    揺らすこと。ヴィブラートとは言わない。
    弾弦後にそのまま左手指と手首をつかって微妙に揺らす。
    記譜は線によって写実的、グラフィックに書き表す。
    「ゆらす」。
    押シカンと一体になっていることが多い。
  • ハジキ
    リン。薬指で弦をはじく。「はじく」。
  • ウチ
    タタキ。
    弦を弾いたあと、余韻のあるうちに薬指で別の勘所を打ち、そのまま押さえて余韻を出す。
    「うつ」。
  • スリ上ゲ(スリ下ゲ)
    弦を弾いた後、指を離さず弦上を滑るようにして別の勘所に移動し、そのまま押さえる。
    音高を上げるのがスリ上ゲ、下げるのがスリ下ゲ。
    「すりあげる」「すりさげる」。
  • シャン
    掻キ撥をきわめて速く奏したあと、すぐに左手指の腹全体で弦を押さえて余韻を止める。
    掻キ撥とトメが一体になったもの。
    「崩れ」のトメの手などに用いられる。「とめる」。
  • ハタキ
    弦を弾かず、撥の広い面を使って腹板を打って強烈な打撃音をだす打楽器的奏法。
  • カラ撥
    ス。弦を弾かず、撥先を腹板に当てて軽い打撃音を出す打楽器的奏法。
    ハタキよりも弱い。

  • 間(ま)。ひと呼吸、間合をとること。
    場面によってその間合いの長さは異なる。
    休止ではなく、積極的な沈黙の状態を保つことを意味する。
    音は出ないが、音を出すことと等価値。

調律

調律は「本調子」「一五下り」「一七下り」が主に使われます。

基本となる音程は「〇本」と呼ばれ、琵琶では主に三本~五本が使われます。
三味線にも〇本という表現がありますが、一音分ずれていて、琵琶の三本は三味線の一本に相当します。

どの調律でも、四・五弦は同じ音高となります。

  • 本調子
    最も基本となる調律です。古典曲のほとんどで用いられます。
    二弦が最も低い音で、一弦と三弦は同じ音高です。
    二弦~三弦~四・五弦は三味線の本調子と同じ音高差になります。
一弦 二弦 三弦 四・五弦
一本 G D G D
二本 G# D# G# D#
三本 A E A E
四本 A# F A# F
五本 B F# B F#
六本 C G C G
七本 C# G# C# G#
八本 D A D A
  • 一五下り
    低音域が豊かで、低音域のダイナミックな表現力を必要とする古典曲や現代曲に用いられます。
    一弦と二弦が同じ音高です。
    一弦を、本調子より五律下げます。
一弦 二弦 三弦 四・五弦
一本 D D G D
二本 D# D# G# D#
三本 E E A E
四本 F F A# F
五本 F# F# B F#
六本 G G C G
七本 G# G# C# G#
八本 A A D A
  • 一七下り
    重厚な響きになり、現代曲で用いられます。
    一弦を、本調子より七律下げます。
一弦 二弦 三弦 四・五弦
一本 C D G D
二本 C# D# G# D#
三本 D E A E
四本 D# F A# F
五本 E F# B F#
六本 F G C G
七本 F# G# C# G#
八本 G A D A

和楽器用楽譜作成・変換ソフト 和楽一筋 説明書

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